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あの夏の思い出


 もう7年も前の夏の日の話。
そのころ私には、一緒に騒げる仲間がいて、毎日がそりゃあもう楽しかった。
楽しい日々は短くて、友達がずっとくっついてはしゃぎまわってた期間はほんの3ヶ月ぐらい。
夏が終わったら、前ほど一緒にいなくなって、冬が終わるころには離れ離れになった。

そんな友達とはしゃいだ夏の夜の話。

 授業なんかそっちのけで、友達がいつもの喫煙所で集まってる。
私は煙草は吸わないけど、煙草を吸う人が喫煙所から離れようとしないので、自然にみんな集まってしまう。
今日の話題は、「怪談〜本当にあったらしいコワイ話〜」だった。
そのうち、自分の怖かった話をし始めて、それが車でいける範囲ということで、
「よし!今日は心霊スポットへ行ってみよう!」
と、誰かが言い出すのは時間の問題だった。

 夜、あらかじめ決めておいた時間に学校へ集合。だんだん暗くなってきた夜7時ごろ。

とりあえず、第一の心霊スポットはなんと学校の4階。
全員(11人)で恐る恐る、先頭を譲り合いながら4階へ。
当たり前ですが、何も出なかった。皆の不満がたまり、怖い体験をせずにはいられない気持が高まった。

次の心霊スポット?は、学校から少し歩いたところにある廃車小屋。(といっても大通りに面してる)
今にも倒れそうな、ささくれだった木造2階建ての小屋に入ると、真っ暗。
手探りで壁を撫で回していたら、偶然にも照明のスイッチを押してしまい、あかりに気がついたオッちゃんが
「コラー!どこのガッコのもんじゃオマエらー!」とものすごい形相で走ってくる。
とりあえず私含めた数人は逃げた。
金網を登る人。街路樹に登る人。場は混迷を極めた。
つかまった人がちゃんと謝ったため、学校への通報はカンベンしてくれた。ホントすいませんでした。

次の心霊スポットは、京都の某池。自殺する人もいると言う話しだし、今回はかなり怖そうです。
とにかく現地は真っ暗。足を踏み外さないように、池べりをあるく。
先輩の一人が、草むらに砂利を投げて音を立てて、何度か皆を驚かせていたぐらいで、
ここも特に何もなく暗闇を歩いただけだった。

次の心霊スポットは、事前に2つコワイ話があった。
殺人事件の現場になったことがあるという噂。ここは私有地で、本来勝手に入っていいところではないので、
侵入者を知らせるサイレンで警官がやってきて、発砲したので一人死んだという噂。
……今考えると「そんなバカな」って感じですな……
とにかく、山道を車で登っていく。だいぶ登ったところで、少し広い草むらに出た。
車を2台とめて、11人はソロソロと降りる。すでに元気の良い二人が、先に破れた金網をくぐってる……
ウーウーウーウー!!
サイレンが鳴った!まさかコレがあの、噂の侵入者を知らせるサイレン!?
警官が来る!?それで発砲とか!
混乱しながら慌てて全員車に戻り、舗装もされていない曲がりくねった山道を猛スピードで車が駆け下りる!

思えば、このときの車に同乗してたことが一番コワイ体験かもしれない。
迫り来る木々の間を縫って、まだほとんどが10代の若者たちという軍団で、猛スピードで駆け抜けたんだもん。
よく事故にあわなかったものだ。

さらに次の心霊スポット。
すでに無人になり、取り壊される予定の病院。
その内部ではカルテが散らかり、壁には生々しい血痕が(なぜ!)飛び散っているという。
以前忍び込んだという先輩は、「あれはかなりの怖さだったぜ」と身震いした。
車で現地へ向かう。何度も道を間違って、同じ所をグルグル回った。
「おかしいな、とりあえず場所の確認!空き地へ集合」
携帯で連絡をとりながら、全員が空き地へ集合した。
土地感のある先輩が、代表して周辺を観察しに行くことに。
その結果……現在車をとめている場所こそが、元 病院のあった場所であることが判明。


この日は怖かった思い出というより、今となってはかなり楽しかった思い出の日になっている。
このころの日記は毎日はみ出すほどぎっしり書いてあって、本当に楽しそうなんだ。
友達だった人は、今は連絡先もすっかりわからなくなってしまった。
本名すら、思い出せるか怪しいぐらいなんだ。
呼び合ってたあだ名は、しっかり覚えているけどね。
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