「キーコ、お部屋のロッカーの鍵かけてないのかい?」
「だって、うちには勝手に人のロッカーを開けるような人はいないって信じてるもん。」
5年前の無邪気なキーコとそんな会話をしたことさえ、
キーコのパパは忘れていたくらいです。
もちろんロッカーを開けたことは一度もありません。
さほど興味もなかったのです。
でも、ここ最近キーコのロッカーに鍵がかかっていることが
どうしても気になって仕方がないのです。
いつごろからキーコは鍵をかけはじめたんだろう。
そうだ、ママが行方不明になって、何処に行っちゃったんだろうと
キーコの部屋でがっくりひざを落として居た時にはじめて気がついたんだ。
もう中学生だもんなぁ。
秘密のひとつやふたつあっても不思議じゃないかもしれない。
でも、別にあけたりしないのに。ボクの信用はなくなっちゃったのかな。
日記でもかくしてあるのかな。交換日記かもな。好きな男の子の事とか
かいてあるのかなー。
友達もどんな子なんだろう。友達がどういう子でも、うちの子はうちの子だけど…
いろいろ考え出したらキリがありません。
キーコが犬の散歩がてら、夕食の買い物に出かけた時に
ついにパパはスペアキーで、キーコのロッカーを開けてしまいました。
!!!
その考えもしなかった中身に、パパは声も出ませんでした。
ただひざがガクガク震えます。
「ただいま」
「!」
キーコが帰ってきていたことにも気づかないくらい呆然としていました。
「みちゃったんだ。」
キーコが犬を抱いて呟きました。
「ママがいけないのよ。勝手に私のロッカーを開けて、
交換日記を読んだりするんだもん」
「キーコ」
「あんなに信用してたのに。絶対、信用してたのに。
見られたくないロッカーには、鍵をかけることってお互いのために大事だったんだよね」
「ね、パパ?」
end
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