絵に描いたモチに画竜点睛。
絵にかいたおもちは食べることが出来ないけれど、
海太くんは自分の描いたおもちに眼を描いてみました。
眼は命の源です。
おもちは絵から飛び出してきました。
「こんにちは。僕に命を、ありがとう。」
おもちは驚いている海太の両手でプルプルしながら、
その眼をパチパチさせました。
海太くんはおもちが大好きでした。
今日も勉強中に、食べたイナァと思いながらおもちをノートにかいていました。
わぁ、上手にかけた。美味しそうなおもちを絵に描くのは難しいです。
でも、海太くんのかいたおもちは本当に美味しそうでした。
このおもちが本物だったらなぁ。
絵に描いたおもちが本物ではないことを海太くんは良く知っていました。
だけど、絵に描いた竜が天に昇った話しも知っていました。
眼を書けば本物になるかもしれない。
そうおもって、カワイイ黒いおめめをふたつ、かきました。
そしたらおもちがとびだしてきたわけです。
おもちは、自分に与えられた命を本当に楽しんでいて、
海太くんの部屋の中をピョンピョン跳ね回ります。
「なんだか、おもちというよりうさぎみたいだね。」
海太くんがそう言うと、おもちは
「僕が何だって、全然かまわないよ。こうして、動き回って命があるんだから」
とひざの上でいいました。
海太くんとおもちは、一晩中一緒にあそびました。
光がさしこんできて、海太くんは目が覚めました。
いつのまにか眠ってしまったようです。
「おもちは!?」
跳ね起きて辺りを見回しました。
おもちはいなくなっていました。
天に昇っていっちゃったのかな…
自分が描いたノートをみると、確かにそこにおもちがいたということを
物語るように白い空白が残っていました。
海太くんは少しの間、静かにノートを見つめていました。
end
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